有川浩さんの小説『阪急電車』は、阪急今津線を舞台に、乗客たちの小さな出会いや出来事を描いた物語です。わたしたちが普段、何気なく乗っている電車の中でも、実は小さなドラマが生まれているのかもしれません。
この小説の舞台は阪急今津線ですが、たまには自分の地元の路線を見直してみるのも面白いかも。
各駅停車にあえて乗って時間をかけてみたり、いつもは降りない駅で降りてみたり。そんな小さな冒険が、新たな発見につながることもあります。

今回は、小説『阪急電車』の舞台となった阪急今津線、そして沿線の魅力的なスポットの一つである「門戸厄神」をご紹介します。実際に阪急今津線に乗って、物語の余韻を感じながら旅をしてみませんか?
小説「阪急電車」とは:日常から生まれる小さな奇跡の物語

あらすじ
兵庫県を走る阪急今津線の北線(片道15分のローカル線)を舞台に、電車内や駅周辺で交錯する乗客たちの人生を描いた全16話の物語。
『阪急電車』には様々な登場人物が登場し、それぞれのエピソードが描かれます。
日常の中で偶然出会った人々が互いに影響を与え合い、小さな奇跡を生む群像劇です。
読んだ感想:「阪急電車」は温かい人間ドラマと電車が繋ぐ物語
『阪急電車』を読み終えたとき、心がふんわり温まるような「ほっこり」とした気持ちになりました。
電車に乗り合わせたことで偶然生まれた小さな出来事が、恋愛のきっかけになったり、人生を好転させたりする。「こういうこと、自分にもありそう」と思えるようなものもあり、感情移入しやすくなっています。
物語の構成もユニークで、1駅ごとに章が進み、主人公が変わりながらもストーリーがつながっていく仕掛け。往路では「この登場人物たちはどうなるんだろう?」と気になりながら読み進め、折り返しの復路では半年後の物語が描かれ、ストーリーが回収されていく展開がおもしろかったです。
物語の舞台、阪急今津線ってどんな路線?

阪急今津線は、兵庫県内を走る阪急電鉄のローカル線。
宝塚駅から西宮北口駅を経由し、今津駅までを結んでいます。地元の人々の生活に密着した路線でありながら、小説『阪急電車』では「阪急電車の中でも全国的に知名度が低い」と描写されています。
もともと今津線は宝塚駅~今津駅を一本で結ぶ路線でしたが、1984年に西宮北口駅を境に南北に分断されました。そのため、現在は以下の2つの区間に分かれています。
- 北線(宝塚駅~西宮北口駅)
- 南線(西宮北口駅~今津駅) ※わずか3駅、乗車時間約5分のミニ路線
小説「阪急電車」はこの北線が舞台となっています。
阪急今津線の見どころと寄り道スポット

阪急今津線は短いながらも、歴史や文化、地元の魅力が詰まった路線です。
その中でも寄り道におすすめのスポットをご紹介します。
宝塚駅
宝塚駅は、華やかな雰囲気が漂う街。「宝塚大劇場」は宝塚歌劇団の本拠地で、多くのファンが訪れます。周辺には、花のみちや手塚治虫記念館もあり、観光スポットとしても人気。
小説では「宝塚ホテル」が宝塚南口駅にあると描かれていますが、2020年に移転し、現在は宝塚駅が最寄り駅になっています。
仁川駅
仁川駅の最寄りには、JRAの主要競馬場の一つ「阪神競馬場」があります。
競馬ファンはもちろん、美しい庭園や噴水広場があり、家族連れにも人気。
ポニー乗馬やアスレチック、キッズガーデンなど、お子様向けの遊び場も充実していますよ!
門戸厄神駅
厄除けで名高い「門戸厄神東光寺」の最寄り駅。関西一円から多くの参拝者が訪れます。
西宮北口駅
阪急神戸線と接続する便利な駅。駅直結の大型商業施設「阪急西宮ガーデンズ」ではファッションやグルメ、映画館などが揃っています。
また、兵庫県立芸術文化センターでは、世界的に活躍する指揮者・佐渡裕氏が芸術監督を務め、クラシックコンサートやミュージカルなど、多彩な舞台芸術が楽しめます。
小説『阪急電車』を読んだ後は、ぜひ実際に阪急今津線に乗って、物語の舞台を巡ってみてはいかがでしょうか?
関西の厄除け・厄払いは門戸厄神へ!ご利益や祈祷の流れを紹介
小説の中では門戸厄神は名称しか登場しませんが、ぜひ訪れてほしい魅力的な場所です。
門戸厄神の基本情報
・正式名:高野山真言宗別格本山 松泰山東光寺
・御本尊:厄神明王
・ご利益:厄除け開運、厄払い、病気平癒、家内安全など
・参拝者:関西一円から多くの人が訪れる。
門戸厄神の歴史と特徴

門戸厄神の起源は西暦829年。
嵯峨天皇の41歳の厄年に、弘法大師・空海が厄除祈願を行ったことが始まりとされています。
日本三体厄神の一つとして知られ、厄除けだけでなく開運や病気平癒など、さまざまな願いごとにご利益があるとされています。
門戸厄神といえば厄除け開運祈願
門戸厄神の特別祈祷は、厄除けや開運を目的とした特別な祈祷です。
当日のお祓いに加え、翌日から1年間にわたり祈祷が行われます。
厄年でなくても受けられますよ。

特別祈祷の流れ
1.寺務所で申し込み(申込用紙に祈願内容、住所氏名、金額を記入し提出)
2.番号札を受け取る
3.呼ばれた番号順に祈祷殿へ入室
4.祈祷を受ける
5.御札、お守り、御供物をいただく
6.翌日から1年間、門戸厄神で継続祈祷
7.1年後、御札を古札納所に納め、お礼参り
私は毎年2月頃に特別祈祷を受けていますが、非常に多くの方が訪れています。
1回の祈祷で約100名が入室できるため、待ち時間はほぼありません。
コロナ禍前までは本堂の厄神堂で祈祷を受けていましたが、現在は別の場所になりました。

個人的には、本堂の雰囲気が好きでしたが、イスに座れるようになったのはありがたいですね…。
そして、昨今の事情により祈祷料も上がりました(しみじみ)。
圧巻の壁画「厄神竜王」

門戸厄神の境内外壁には、全長30mにおよぶ壁画があり、巨大な龍が描かれています。
この龍は「厄神竜王」と呼ばれ、御本尊・厄神明王の眷属であり、厄を払い運を開く象徴とされています。
遠くから見ると水墨画のようにも見えますが、近くで見ると意外とファンタジーな雰囲気。
それもそのはず、デザインを担当したのは映画版『ファイナルファンタジー』の制作に携わったファンタジーアートの巨匠・内尾和正さん。
幻想的な世界観と巨大な龍の迫力は、一見の価値ありです!
見どころポイントは隠れ龍探し!
壁画全体には数多くの龍が描かれていますが、その正確な数は誰にも分からないそうです。
森や木々の中に潜む龍たちは、観る人によって新たな発見があるのも魅力。
少し立ち止まって、じっくり探してみてくださいね。
日常にある小さな奇跡を見つけに、沿線の旅へ

小説『阪急電車』を読み進めるうちに、登場人物たちの何気ない出会いや小さな奇跡に心が温かくなりました。物語の舞台である阪急今津線はもちろんですが、私たちが普段乗っている電車の中にも、ふとした瞬間に特別な気づきがあるかもしれません。
毎日の通勤・通学で見慣れた景色も、少し視点を変えれば新たな魅力が見えてくるもの。たまにはスマホを閉じて、身近な沿線の風景や駅周辺のスポットに目を向けてみるのも楽しいかもしれませんね。
そんな気持ちで『阪急電車』を読めば、物語の情景がより鮮やかに浮かび上がり、まるで阪急今津線を旅しているような気分を味わえるはずです。